藍の家

四国大学と藍染

藍の家内部

徳島の吉野川流域はかつての大藍産地でしたが、今は平野に点在する藍屋敷が往時の隆盛を物語るばかりです。
幸いにも現在、五軒の藍師が健在で、藍を生産しています。
四国大学は、藍産地だった吉野川流域に位置し、地元の大学として染色学の一環に藍をとりあげ、学園の一角に藍甕を設けて40年が過ぎました。学園の藍は、学生中心の教材研究の域を出ないものですが、学生と共に藍を建て、染める過程の中で多くの人に出会い、書物に出会い、古い藍布の確かな美しい仕事に出会うことができます。学園の藍は多くの人々の好意に支えられ、育てられ、方向づけられてきました。

藍の家

藍の家外観

四国大学では昭和54年より大学内に藍染専門施設「藍の家」を設置し、地域の伝統文化に根ざした教育研究活動を行っています。1階には4基の甕を据えた本格的な藍染め実習室と教室があり、2階には展示室を備えています。
学生は自分たちで藍を仕込み、作品制作に取り組むという体験を通じて、徳島の伝統文化と技術を習得することに励んでいます。毎年、秋の芳藍祭では展示室での作品発表やバザーも行われており、地域の方々から好評を得ています。また、学内の学生だけでなく、四国大学オープンカレッジや出張授業を通じて広く一般社会人や県内外の小中高等学校の児童・生徒に開放し、積極的に藍染技術の普及に努めています。海外からの研修生も受け入れており、現在までインド・台湾・エルサルバドル・アルゼンチン・ハンガリーなど、多くの国から藍の文化と技術を学びに来られました。平成19年度からは徳島県藍染研究会の事務局も設置され、初心者からプロの染色家まで広い範囲で藍染の普及、技術の向上に向けた活動を行っています。

「藍の家」年譜

昭和54年10月 学園の一角に藍甕4基を設置し、染色学の一環として藍建て、藍染めの実験演習を始める。
昭和55年2月 卒業制作展「藍三月」(桑原・大西・近久) 於郷土文化会館
昭和57年5月 作品展「藍あしたば」 於郷土文化会館
昭和57年11月 研修旅行 染織と生活社主催「阿波藍を訪ねる会」
昭和61年4月 徳島県教育委員会派遣長期研修生 研究生として受け入れる(中野先生)
昭和61年9月 藍染め藍建て技法百科 染織a No.66,9,1986
昭和63年2月 展示会「学園の藍とインドのきれ達」展 於郷土文化会館
昭和63年8月 講習会化学への招待 日本化学会 於徳島大学工学部
昭和63年10月 講演「タール砂漠に染織を訪ねて」 婦人学級合同学習
平成1年5月 展示会「学園の藍布たち」学生・教員の作品と収集した日本の藍布 於郷土文化会館
平成1年9月 緑陰講座 開講13回
平成2年7月 講演「学園に藍を建てて」 日本家政学会夏期セミナー
平成3年4月 「藍の家」竣工式(木造2階建て・民芸の趣を添えた簡素な建物)
平成3年7月 四国放送おはよう徳島「徳島一番」藍の古布コレクション紹介
平成4年3月 開学30周年式典と藍の家公開 展示と茶会
平成4年8月 全国教育養成栄養士協会 学会講演「藍の美と科学」 於阿波観光ホテル
平成5年3月 全国病院栄養士学会講演「藍の美とこころ」 於郷土文化会館
平成6年2月 インドアッサムなどムガシルクの研修旅行(赤尾・金丸・西垣)
平成6年7月 鹿児島市立谷山中学校 中玉利要氏研修
平成7年8月 インドアーメダバード国立デザイン研究所パドミニ・バララム留学(6ヵ月)
平成8年10月 石原先生ファッションショー(20点染める) 於MIDシアター
平成9年4月 藍建て・藍染めの記録 染織アルファNo.193,17~28、(1997)
平成10年3月 藍と墨 二人展 於恰美術館(富久和代・野田良子)
平成10年4月 藍布コレクション展 四国大学コレクション 100点 於藍の館
平成10年5月 架橋全通記念行事 藍フェスタ講演「藍染めの技法」 於藍の館
平成10年6月 青年会議所全国大会アスティの会場舞台装置
平成10年7月 大阪民芸館 くらしの色-日本の藍-展 記念講演「自分の藍を建てる」 於国際児童会館
平成10年10月 大阪浪速人権博物館 第45回特別展 本学所蔵藍布30点
平成11年3月 藍染作品展「藍奏-心に響く色-」於技の館
平成11年7月 徳島城博物館 企画展「ジャパンブルー 藍染の美」
平成12年11月 JETRO産業交流計画事業 検討会 於東京
平成13年3月 JETRO産業交流計画 藍染専門家派遣事業 於エルサルバドル
平成13年6月 徳島県 海外技術研修員受入事業
(アルゼンチンより亀井マリアフロレンシア)
平成13年8月 第13回全国農業青年交換大会
平成13年11月 「学校法人四国大学 学園創立75周年記念事業」
平成14年6月 JICA青年海外協力隊員技術補完研修員受入
平成14年6月 JETROよりエルサルバドル支援に対し感謝状が送られる 於日本貿易振興会
平成14年11月 JETRO産業交流計画 藍染専門家派遣事業 於エルサルバドル
平成15年1月 「世界の動き 1月号」財団法人世界の動き社発行 外務省編集協力
平成16年4月 徳島県教育委員会派遣長期研修生 研究生として受け入れる (青木先生)
平成18年5月 四国へんろ衣装展・四国へんろ写真展 30日(火)まで 於四国大学交流プラザ
平成18年6月 四国大学教育改善活動助成金により生活科学部が食育に関するスペシャリストを養成するための活動拠点として「食育夢工房」を設立し、藍染による食育グッズの製作を行うこととなった 藍染部門所属学生10名
平成18年6月 平成18年度地域の達人事業 名西高校芸術科 58名 1日目 藍に関する講義 (蔵本・有内)
平成18年6月 平成18年度地域の達人事業 名西高校芸術科 58名 2日目 藍に関する講義 (有内)
平成18年8月 高等学校美術学会所属教員研修会 藍染実習 27名
平成18年9月 第1回 マイバック作品コンテスト出品 6名 うち1名が最優秀賞受賞(食育夢工房)
平成18年9月 徳島ビジネスチャレンジメッセ出展(食育夢工房)16(土)まで
平成18年9月 オンリーワンハイスクール推進事業 城ノ内高校にて藍建て
平成18年10月 四国大学オープンカレッジ 藍染で作るMy Bag 毎週土曜 全2回 9名
平成18年10月 四国へんろ衣装展 11.13(月)まで 於徳島空港ビル
平成18年11月 四国大学芳藍祭作品展示 12(日)まで(食育夢工房)
平成18年11月 名西高校留学生 2名 藍染実習
平成18年11月 舞踏組曲「傾城阿波の鳴門」実行委員会 作品製作部会藍染衣装製作担当となる 任期:1年
平成18年12月 徳島県消費者交流大会出展(食育夢工房)
平成18年12月 東南アジア青年の船参加者
平成19年1月 インド アーメダバード国立デザイン研究所パドミニ・バララム氏 来徳 藍染施設見学研修 16日(火)まで

藍を建てる

染料イメージ1

四国大学の藍甕はわずか4甕ですから藍建ては前期・後期の授業日程に沿って、5月・9月頃大きく建て替えて、後は入った行事に従って、1~2甕、薄くなった順に建て替えています。
さらに、夏場は、滞在して研修に来る人もあり、ポリ容器を用いて各自の日程に合わせて随時建てています。限られた染料(すくも)のため年間4~5俵(1俵-56.25kg)大切に使用しています。
すくもの中に含まれる色素indigo(青藍)は水に溶けないため染色に先立って水に溶ける白藍にする必要があります。
さらに、藍は高アルカリの領域で醗酵する特異な性質をもっているため、消石灰や木灰汁が必須なものとなります。アルカリの存在下で醗酵することによって水に溶けない青藍は水に溶ける白藍となり、初めて染色が可能となるです。この不可欠の操作を「藍を建てる」と言っています。

藍の色

染色イメージ2

染色は、十分に水に浸しておいた布を絞り、広げて繰り入れ、白藍を十分吸収させます。それを均一に絞り、空気酸化させると布はたちまち萌黄色に変わり、水洗いすると青色が現れます。浸染と空気酸化を繰り返し、好みの濃さになるまで染めます。

藍色の段落ちは、ほとんど色味のない「甕のぞき」から「水縹」「浅葱色」「花浅葱」「縹」「藍色」「紺」「搗色」「搗返し」と1回から20数回染め重ねていきます。

染色された藍の色は、その直後から赤色が退色しはじめ、次第に藍本来の色に落ち着いてきます。そして、何回も水をくぐらせるうちに、布の風合いは良くなり、藍布特有の質感が高まってきます。

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