第1回富士正晴全国高校生文学賞の結果について

応募総数193作品の中から厳正な審査を行い 、 大賞、優秀賞、奨励賞の各賞が決定しました。審査結果は次のとおりです。
大賞については、受賞者の言葉と受賞作品が、徳島文学協会発行の文芸雑誌『徳島文學』に掲載されます。

選考結果

賞名高校名【県名】部誌名作品名作者
大賞 筑紫女学園高校【福岡県】 いさらゐ ほうじょうや 吉原幸歩
優秀賞 盛岡第三高校【岩手県】 しあわせの見つけ方 三浦麻名
白陵高校【兵庫県】 紅炎 終わらない夏 志摩光咲
筑紫女学園高校【福岡県】 いさらゐ 岡惚れ蝉時雨 松原采実
奨励賞 桐光学園高校【神奈川県】 桐光学園文芸部誌 鼓動 木村日真里
花巻北高校【岩手県】 花北文学 赫に消えた夢 高橋明日香
徳島北高校【徳島県】 土の中から 鍋島大輝
岩手水沢高校【岩手県】 夢の後先 佐藤沙絵
星野高校【埼玉県】 若草 サヨナラ絶景観覧車 野城知里
名古屋高校【愛知県】 文学帖 セピア色の雨雲 鈴木康祐
※上記の情報は応募時のものです。

選評

四国大学第一回富士正晴全国高校生文学賞の大賞は、吉原幸歩さんの『ほうじょうや』に決定しました。大学受験を控えた主人公が、気分転換に祖母とお祭りに行くという話で、特にドラマティックな展開ではありませんでした。しかし、受験に直面する高校生の不安や、家族との微妙な距離、疎遠になりつつあった祖母との関係の再構築など、様々に移ろう主人公の心の襞を丁寧に掬い上げていました。また、後半の祭りの描写に臨場感もあり、情景の切り取り方が巧みで筆力の高さがうかがえました。終わり方が唐突ではとの意見もありましたが、主人公と祖母の動きの一瞬を捉えた効果的なラストと見ることができました。

以下、優秀賞に輝いた三作品についてもコメントします。

松原采実さん『岡惚れ蝉時雨』は、弓道を愛好する主人公が、薄れゆく夏の感覚を再認識しようとする物語です。夏なのにエアコンで冷えすぎた教室と、夏の気配を肌で感じられる弓道場という対照的な舞台を行き来しつつ、主人公は最後に風鈴という夏を象徴するイコンに辿り着きます。描写に優れた作品で選考委員の評価も高かったです。
三浦麻名さん『しあわせの見つけ方』は、主人公が個性的な幼馴染に翻弄されながらも、人と人との絆を見出す物語です。自由奔放な幼馴染は時に主人公を苛立たせますが、一途で純粋な部分を持ち合わせたかけがえのない友人であることに最後は気づくことができます。
志摩光咲さん『終わらない夏』は、かつて高校球児だった主人公たちが、社会人になって久しぶりに再会し、世界的感染症で甲子園が中止になった高校三年生の時のやり切れない思いにピリオドを打つというストーリーです。爽やかでしかし一抹のさみしさが漂うラストシーンが秀逸でした。

何気ない日常を切り取り、主人公や登場人物の心の機微を丁寧に描いてゆくというアプローチは受賞作の多くに共通していました。最終選考作以外でも才能の片鱗が垣間見られる作品、将来性を感じさせる作品が多数ありました。ぜひこれからも多くの生徒さんに文芸創作に取り組んでもらいたいです。

審査員  阿部曜子(四国大学 文学部長)         
友重幸四郎(四国大学 文学部 日本文学科 教授)
佐々木義登(四国大学 文学部 日本文学科 教授)

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