SDGs・消費者政策研究会の研究紹介

「これからをどう生きるか」を考えて

2023年11月30日研究紹介

「これからをどう生きるか」を考えて

"持続可能性"を意識した思考と行動

加渡先生は、もともとライフプランニングがご専門ですが、現在はエシカル消費やSDGsなど、消費者の立場から考える持続可能性に注力されています。こちらに関心を持ったきっかけを教えてください。

100人いれば100通りになるのがライフプラン。万人に当てはまる正解はありません。もっとも大切なのはその人の生き方ですが、生きていくためにはお金が必要です。ライフプランニングとは、お金と時間の使い方をどうするかを考えること。しかし、日本にはまだパーソナルファイナンスを体系的に学ぶところがないんです。家庭でも学校でもきちんと教えられてはいません。私が研究しているのはその教育啓発方法になります。

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生きていくにはお金を使って資源を消費していくわけですが、地域の持続可能性や発展という視点から考えると、自己中心的な消費を続けていけば、地域はもちろん、自分自身の人生も決して心豊かなものにはなりません。そういう流れの中で2015年に国連で採択されたのがSDGs(国連持続可能な開発目標)。つまり、経済と環境と社会課題の包摂を両立させた持続可能な地域づくりが、世界的な課題として認識されるようになったんですね。一方でヨーロッパでは、古くからエシカル消費の考え方が普及しつつありましたが、私自身が強く意識するようになったのは、2011年の東日本大震災からです。

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現地にボランティアに行かなくても、被災地のものを積極的に購入することで被災地の方々のお役に立てる――。応援消費という消費行動でサポートできるわけですね。大学は地域における知の拠点でもあります。感覚がニュートラルな若い世代にこうした考え方を知ってもらい、具体的な行動に移してもらうことが大切だと考えるようになりました。

知識だけではなく、実践することを第一に

四国大学短期大学部では、具体的にどのような取り組みを進めているのでしょうか。

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最初に取り組んだのは、2014年度からスタートした高校生対象の『街角コンシューマー・カフェ』です。文部科学省の「平成26年度『連携・協働による消費者教育推進事業』における消費者教育推進のための実証的共同研究」に採択され、当時の徳島県知事をはじめとするゲストと高校生たちの活発な議論が行われました。これを一つの例として、短期大学部ビジネス・コミュニケーション科をはじめ、他学部の学生たちの活動も、多方面に展開していくことになります。

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たとえば、2015年の『徳島県消費者問題県民大会』や2019年の『徳島学生サミット』では、学生たちが発表に挑戦しました。阿南市富岡町商店街の活性化を目指すフィールドワークでは、留学生たちをメンバーに加えて「エシカル商店街」をテーマにプレゼンテーション。環境や地産地消、消費者とのコミュニケーションの視点から提案を行っています。やはり重要なのは知識だけではなく、自分たちで実践していくことなんです。こうした取り組みが、2018年5月の『四国大学エシカル消費自主宣言』につながっていきました。

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学生たちが主体的に学んだことを発信しているわけですね。

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そのとおりです。ものを買う際の判断基準には「価格」「品質」「安全性」の3つがありますよね。いつの時代でも変えてはいけない消費者の権利ですが、これからは第4の基準として「エシカル」、つまり「その商品やサービスが環境や生産者の権利を思いやり、地域の活性化に良い影響を及ぼすものか、配慮されたものか」という価値観を持ちながら、一人ひとりが消費の影響を考えていく時代だと思います。

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オーガニックやフェアトレードの製品は、一般のものと比べて高価になるため、学生のうちは購入が難しい面もあるでしょう。でも、その仕組みや考え方を学んでいれば、社会に出てからの選択肢の一つにエシカル消費が入ってくるはず。使い捨てを止め、修理して長く使い続けたり、捨てるときはリサイクルのルートに乗せて適正に廃棄するなど、自分たちが実践できることを再確認していかなければなりません。

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未来をつくるのは"今"だから

加渡先生がエシカル消費やSDGsを含めた消費者教育で、課題だと感じているのはどんなところでしょう。

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急速に変化するグローバル化やデジタル化への対応です!まだまだいろいろ足りているとは言えない状況ですから。エシカル消費やSDGsに関して言えば、もう若者たちの方がはるかに進んでいます。むしろ、意識が追い付いていないのは大人の側かもしれません。でも、今の社会の基礎を築き、若者たちバトンタッチしていくのは私たち大人の役割ですから、そこには大きな責任が伴うと考えています。

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これからの消費者教育は、大学のような教育機関をはじめ、行政や企業、家庭に至るまで、地域を構成する多様なステークホルダーと連携し、効果的に進めていかなければいけません。また、年齢や立場で変わるライフステージに応じた体系的な取組みも必要です。単なる「お金の使い方」の教育ではなく、倫理観とコミュニケーションを土台にしながら、それぞれの教育分野の特性を生かしていく。そこに終わりはないんです。時代とともに変わっていく価値観を認めながら、持続可能な取り組みを進めていくことが大切。若者の柔軟な感性が生きるんですね。

たとえば、2019年度から徳島県で始まった『エシカル甲子園』。私は審査副委員長を担当していますが、全国の高校が発表するそれぞれの地元に即したさまざまな取り組みに、毎年とても感銘を受けています。徳島の高校生たちも非常に頑張っているんですよ。

最後に、読者の方々へメッセージをお願いします。

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徳島県はすべての公立高校にエシカルクラブが設置された「エシカル先進県」です。四国大学はその受け皿としての役割を果たしながら、良い消費者となるべく多彩な活動を実践しています。エシカル消費やSDGsを継続的に学び、持続可能な地域の担い手を目指すのであれば、ぜひ四国大学で一緒に活動しましょう。四国大学は「エシカル先進大学」です!

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加渡 いづみ

短期大学部 ビジネス・コミュニケーション科 教授
地域教育・連携センター 教授(兼務)
SDSs・消費者政策研究会 会長
Green Transformation推進機構 副本部長

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